はじめに
朝起きて、ふとメールボックスを見たらドメインレジストラの Netim から見覚えのないドメイン移管のメールが届いており、肝を冷やした。
Subject: [xxx.su] Notification of transfer out
Dear customer,
We received a notification from the Registry that your domain name xxx.su has been transferred out of our management.
…
いや、移管した覚えないんだが…?
個人で使っている .su
ドメイン (旧ソビエト連邦の ccTLD) の話だが、ドメインレジストラとして Netim を使っていて、管理自体はロシアの RU-CENTER が行っている構造になっている。正直この時点で嫌な予感しかしなかった。
何が起きたのか
Netim のサポートに慌てて問い合わせたところ、以下のような返事が返ってきた。
I’ve checked with our ops team and in this case I can confirm they’ve ran a script checking for .RU and .SU domains that weren’t linked to us anymore at the Registry but still displayed incorrectly as such
要するに、 Netim 側でシステムの不整合を修正するスクリプトを実行したところ、 RU-CENTER 側では既に Netim の管理下になかったドメインが検出されて、「移管済み」として処理されたということらしい。
ここで分かったのは:
- 外部レジストラへの移管ではない
- RU-CENTER 内部でのアカウント間移動の可能性
- Netim は RU-CENTER 側の自分のアカウントに対してアクセス権限がない
泥沼の始まり
Netim, RU-CENTER との格闘
先ずは元々ドメインを購入した Netim のサポートに問い合わせたところ、「こっちは何も出来ないから、まずは RU-CENTER に問い合わせてくれ。」というやり取りを数ターンした。
頼みの綱の RU-CENTER のサポートに問い合わせても、「ウェブサイトは動いてるけど?」みたいな的外れな返答しか返ってこない。いや、そうじゃなくてだな…。
余計なことをして更に複雑化
焦った私は、 RU-CENTER 上でワンクリックで REG.RU (ロシアの別のレジストラ) への移行が出来るサービスを試してみたが、これが完全に裏目に出た。移行が不完全な状態で止まってしまい、自分の目からはドメインが宙に浮いた状態になってしまった。
自分の RU-CENTER アカウント (XXXXX1/NIC-D
) を確認したら、なんとドメインが消えていた。これはマズい。
解決への道のり
ここからが本当の戦いだった。 (5 日くらいかかった…)
幸いなことに RU-CENTER 側のヘルプチケットの担当者が明確な答えを出してくれたので、おぼつかない英語でやり取りしながら進めた。
ドメインの行方を探す
RU-CENTER に再度問い合わせを行ったところ、意外なことにちゃんと返事が返ってきた。
どうやらログイン画面の、パスワードリカバリの手段に “ドメイン名に紐付くメールアドレスにリセットリンクを送信” という手段があるようで、そこからアクセス手段を得たことでドメイン自体の管理権は取り戻せた。
先述の REG.RU への移行というオペミスをした際に自動的に違う RU-CENTER アカウント (XXXXX2/NIC-D
) が作られていたようだ。
元の RU-CENTER アカウントに戻す
(TLD に依存する可能性があるが) 幸いなことに、 RU-CENTER 間でのドメインの移管はアカウント間での移動のような挙動をしていた。
とりあえず、 XXXXX2/NIC-D
から XXXXX1/NIC-D
にドメインを移動させた。
手元に戻ってきたのは分かったので、 RU-CENTER から Netim へドメイン移管するリクエストを Netim で作成した。が、数日待てど何の反応もない…。
さて、元の RU-CENTER アカウント (XXXXX1/NIC-D
) には戻ってきたものの、 RU-CENTER で自分が直接管理したくない理由がいくつかあった。
- 基本的に英語じゃない。
- コントロールパネルは英語をサポートしているものの、基本的にロシア国内を前提としている。
- 一部の申請などは、国民 ID だったり国家が認定した署名を使わなければならないなど…
- 経済制裁の影響で、国際ブランドのクレジットカードが使えない。
そういった理由もあり、 Netim で経由でドメインの購入をしていた。
Netim からのアクセス承認
どうやって元の状態に戻せば良いのか分からないため、 Netim に問い合わせたところ XXXXXX1/NIC-REG
に紐付けるように言われたので、 RU-CENTER のサポートにその旨を伝えた。
モスクワの時間帯が日中だったこともあり、比較的すぐに返信が来て「添付のリンクを踏んで、操作を承認して」とのことだったので、クリックし承認。
数十秒後、 Netim からドメイントランスファーが出来たメールが来たので、 Netim のコントロールパネルを見たところ “とりあえずは” 大丈夫にみえた。
なぜこんなことが起きたのか
ドメインを購入したのが何ヶ月も前で、直近何も弄った記憶が無いので以下は憶測。
- ドメイン登録時にパスポートのコピーを RU-CENTER に提出する必要があり、 Netim から教えられた RU-CENTER のアカウント (
XXXXX1/NIC-D
) からスキャンしたデータの提出を行った。 - その際に、 “RU-CENTER との直接契約” のボタンを押下し、 Netim が RU-CENTER のドメインを管理する権限を失った。
- 数ヶ月後、 Netim がドメインのリンク状態をチェックするスクリプトを実行し、冒頭のメールに至る。
正直、ロシアのドメイン管理システムの複雑さと、経済制裁下での決済の難しさも相まって、時間勝負だった。
多分、以下のような遷移だったはず。購入当初は以下。
アカウント | 権限譲渡 | 備考 |
---|---|---|
XXXXX1/NIC-D | XXXXX1/NIC-D | 想定していた状態 |
本人確認のタイミングで余計な操作をし、契約を RU-CENTER に移してしまったことにより、以下のような状態で数ヶ月経過していた。
アカウント | 権限譲渡 | 備考 |
---|---|---|
XXXXX1/NIC-D | RU-CENTER | 想定していない |
Netim からメールが来て、慌てて RU-CENTER から REG.RU (XXXXXX2/NIC-REG
) に移そうとしたことで以下のような状態になった。
アカウント | 権限譲渡 | 備考 |
---|---|---|
XXXXX1/NIC-D | RU-CENTER | ドメインなし |
XXXXX2/NIC-D | XXXXXX2/NIC-REG | ドメインあり |
REG.RU への移管が不完全に終わり、 RU-CENTER 間で元のアカウント (XXXXX1/NIC-D
) に戻したことで、以下のような状態になった。
アカウント | 権限譲渡 | 備考 |
---|---|---|
XXXXX1/NIC-D | RU-CENTER | ドメインあり |
XXXXX2/NIC-D | XXXXXX2/NIC-REG | ドメインなし |
Netim への権限譲渡をしたことで、以下のような状態になった。この時点で、 REG.RU のアカウントと、 XXXXX2/NIC-D
の RU-CENTER アカウントは不要になった。
アカウント | 権限譲渡 | 備考 |
---|---|---|
XXXXX1/NIC-D | XXXXXX1/NIC-REG | ドメインあり |
XXXXX2/NIC-D | XXXXXX2/NIC-REG | ドメインなし |
教訓とか
余計な操作をしない。(それはそう。)今回は2つの余計な操作をした。
- 直接契約へ切り替えてしまったこと
- REG.RU への移管を試行したこと
まとめ
結果的に無事解決したが、数日潰れた。 .su
ドメインは「す」なのでドメインハックに使いやすいが 、管理の複雑さを考えると .com
とかの方が楽だなぁと思った今日この頃。
こんなこと始めてだ…と思ったが、違う ccTLD でレジストラ移管をしようとしたら ccTLD の NIC の管理パスワード (移管コードではない) を渡されて四苦八苦した事もあった。
でも、このドメインには愛着があるので、今後も大事に使っていきたい。皆さんも特殊な ccTLD を使う際は気をつけてほしい。